ミャンマー マイクロミルプロジェクト レポート【海ノ向こう編集室】
海ノ向こうコーヒー産地担当の山本です。
2020年11月、ミャンマー国内では新型コロナウイルスの感染が拡大し、国内情勢の悪化が懸念されました。ミャンマーのコーヒーを購入できる会社はいくらでもありますが、私たちが「産地にできることは何だろう?」と考えた時に、日本のロースターさんと産地をつなげることが僕らの使命ではないか。そんな思いが湧いてきたのです。
そこで実施したのが、ロースターさんに出資いただいた協賛金で現地の村に精製所(マイクロミル)を作る「マイクロミルプロジェクト」でした。ロースターさんにとっては、ミャンマーに「自分が協賛して建設したマイクロミル」があることで、その産地のこと、生産者のことを感じていただけるはず。また「精選方法を指定して、農家さんに作ってもらう」ことでさらに、実感を持って販売していただけるのではないだろうかと思い、早速準備に取りかかりました。
2020年12月に募集を開始したところ、私たちの予想をはるかに超えて総額500万円以上が集まりました。2021年1月初旬には現地のパートナー・ジーニアスコーヒーによって啓蒙活動がスタート。農家さんに向けて慎重かつ丁寧にマイクロミルの重要性とそれがもたらすメリットを説明しました。そして賛同してくれた農家さんに精選方法をレクチャーしていったのです。
マイクロミルによって、農家さんの収入が2倍以上に
何より驚いたのは、農家さんの実行力。「わかった!やるよ」と言うとすぐに建設に取りかかり、1週間もかからないうちにマイクロミルが完成。シャン州ユアンガンに大小合わせて17ケ所、15村落に設置をすることができました。
それまで現地の農家さんは収穫した豆をコーヒーチェリーの状態で販売していましたが、マイクロミルで精製できるようになったことで、例年に比べて収入が2倍以上に増加。成果はそれだけ留まらず、彼らが精製技術を習得したことで、品質向上に向けて継続的に取り組めるようになりました。
このプロジェクトの成果を数値化するとトータル500世帯、3,000名以上に何かしらの利益が生まれたことになります。日本に目を向けると、ミャンマーの豆を購入してくださったお客様の数は2021年6月から約半年間で約450社。今もその数は増え続けています。さらにその450社が(楽観的個人的主観で)50名に販売したとすると、22,500名がミャンマーのコーヒーを飲んだことになります。これはコーヒーシーンにおける新たなムーブメントといっても良いのではないでしょうか。
協賛してくださったロースターさんには、マイクロミルを建設した村のリーダーから感謝状が送られました。現在は、オリジナル麻袋とともにお店に飾ってくださり、お客さんから賛同の声もいただいているようです。改めて今回のマイクロミルプロジェクトにご協賛いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
このプロジェクトは、私たちが「今後も継続してミャンマーの生産者さんと関わっていく」という決意表明でもありました。これからもみなさんと一緒にとミャンマーのコーヒーを広めていきたいと考えています。
みなさんもご存じの通り、2021年2月にはミャンマーで軍部によるクーデターが起こりました。国全体に広がった反軍事デモ活動は数多くの被害者を出して、現在は局地的な紛争に発展しています。一時はジーニアスコーヒーとも連絡が取れずに騒然としましたが、幸いにも無事を確認することができました。マイクロミルプロジェクトを実施したユアンガンも比較的安全で、2021年のクロップはどの産地よりも早く届けられました。
しかしミャンマーの先行きは不透明で、農家さんは不安を募らせています。そんな状況だからこそ、コーヒーが彼らの希望になるのではないかと思います。つまり、「ちゃんと買い手がここにいる」「コーヒーを作れば売れる」ということを知らせてあげること。マイクロミルプロジェクトはそれを知ってもらう旗印になると信じています。